トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅調教に20年掛かったダイヤトーンDS-3000

調教に20年掛かったダイヤトーンDS-3000



 新潟方面へ一泊の出張です。関越道の越後湯沢あたりから長岡近くまで、地震の被害の大きさを物語るように道路にはうねうねとした段差が出来ております。そして日の当たらないところには雪がまだ残っていました。サービスエリアのガソリンスタンドで教えてもらったのですが、豪雪地帯の魚沼地区あたりでは4メートル近い積雪だったそうです。

 さて、今回お伺いしたA.Aさん宅のスピーカーはダイヤトーンのDS-3000です。私にとってこのスピーカーは苦い思い出があります。下取り品で店に置いてあったのですが、50キロを越す重さがありますので動かすには一苦労でした。そんなある日、店内の模様替えをしようとしてスピーカーを持ち上げた際に胸に当たり、ミッドのドームユニットが”グシャッ”という音と共につぶれてしまったのです。ちょうど卵の殻が割れたような感じです。

 私は、ここしばらくダイヤトーンの音を聞いておりません。今日久しぶりに聞くのに少し細身の鳴り方ではあるのですが、結構印象がいいです。プリが球と石のハイブリッドであるカウンターポイントの2000、パワーが300B仕様の真空管です。おまけにCECのベルト駆動式トランスポートですから、DUDボロン振動板にしては音がしなやかなんです。このようなハードドームユニットが主流となったのは、ヤマハの1000Mのベリリューム振動板からです。良かったか、悪かったか、今振り返ればそれが日本のスピーカーの歴史の潮目だったように思います。

 全てのメーカーが1000Mを目標に追いつけ追い越せと頑張ってきました。しかし、それはシッカリと前を見据えた目標ではなく、ライバルを意識し過ぎた感があります。どんな音のスピーカーを作りたいのかという音楽像よりも、売り上げで1000Mを追い越そうと必死になっていたような気がしてなりません。これは本質を見失った典型的な例と言えるのはないでしょうか。そんな事と三菱がスピーカー部門から撤退したのと関係があったかどうかは分かりませんが、少なくとも世間では日本のスピーカーの第一人者と認めていたように思います。また、数え切れないほどの技術やノウハウを持ちながら廃業したのは本当に惜しまれてなりません。

 Aさんは当時を振り返りながら、初めの5年は音がきつくて聞くのに辛いものがあったと仰います。また、ダイヤトーンを持っていた仲間は多くいたけど、みんなあきらめて手放してしまったとも。苦節20年、こうして紆余曲折しながら、今の音になり、何とか楽しんで聞けるようになったそうです。

 そんな話を聞けば、「俄然良い音を出してみせるぞ!」と思うのはオーディオ屋の性でしょう。いつものようにスピーカーの位置に「カイザーゲージ」を当て、青い波が示す長さ(157.5ミリ)の半波長分だけ前に動かします。そうすると先ほどまで鳴っていた音のバランスとは正反対のプロポーションの音が出現します。この幅の中に理想のバランスの音が存在するのです。その仕組みさえ分かれば、当てのない無限の音を手探りで探す必要がなくなるのです。

 『音がふくよかになりましたですね』。

 音を聞きながら、一気に理想のポジションまで持って行きます。顕著なのはピアノの重低音が出るようになりました。それに伴ってバイオリンの響きも透明感のある美しいものに変化して来ました。そして、部屋中に音楽が充満するのです。

 これには、さすがのAさんも驚かれたようです。

 出口のスピーカーはこれで良しとして、「費用に対して効果が一番大きいのは入り口のトランスポートの下に性能の良いインシュレーター/PB-BOSSを入れるやる事です」。


 『そうでしょうね、アナログスタビライザーの大仏を体験した時に実感しましたのでよく分かります』。

 『年金生活の身ですからあまり贅沢は出来ませんが、カイザーさんがそこまでいうならやはり聴いてみたいですね』。

 TL-2はフロント中央底部が出っぱっていますので、後ろ1点、前2点の3点支持で受けます。1個入れている途中からでも、音の変化がハッキリと分かるぐらい敏感です。音数が圧倒的に増え、スピーカーから音が出ている事など忘れそうになるほどでもあり、また、あたかも目の前に楽器があるかのようにイメージ出来るのです。この音は、スピーカーが最高の音で鳴るようにセッティング出来ているから出る音なんですが、そんな素晴らしい音になったのは、すべてがPB-BOSSの性能によるものと思いそうになるから不思議です。

 その反対に、良くないコンディションであれば、嫌な音も同時にエネルギーが増しますので、インシュレーターその物が持っているキャラクターだと解釈間違いすることが往々にしてあるのです。

 聴かせて頂いたバッハの無伴奏バイオリンやパルティータが素晴らしく、ついつい聴き入ってしまいました。

 この最近性能の良い製品を開発出来た事と、私のセッティング技術が向上したから出るようになった音ではありますが、それにしてもDS-3000恐るべしです。今日の音を聴く限り、当時は如何に私達の腕が未熟だったかよく分かります。製品の性能を引き出すだけの腕を磨くのが如何に大切か思い知った今回の訪問でした。


 ありがとうございました


 ----- Original Message -----
 From: "A.A"
 To: "カイザーサウンド"
 Sent: Saturday, May 14, 2005 7:34 PM
 Subject: ありがとうございました


 貝崎様

  一昨日はお忙しいところ、わざわざ我が家までお越しいただきありがとうございました。

  セッティングその他、さすがはプロのわざと感心いたしました。私もオーディオは長いのですが、こうしてプロのセッティングを観るのは貴重な体験です。おかげさまで、またいい音へ向かって一歩前進することが出来ました。

 感謝です。

 加えてインシュレーターの力も相当なものです。昨日の夜からいろいろ聴いていますが、セッティングとあいまって、低域に厚みが出たことから、ゆったり感が出てきました。しばらくほかの事をやめてオーディオに集中しそうです。

 年金生活者にはインシュレーターノ代金8万円は大きいのですが、いい音で聴くために長く使えると思えば安いもの、と割り切っています。代金の振込先をお知らせ願います。

 またこちらへお越しのときは是非お立ち寄りください。
 ありがとうございました。


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